予約時間より少し早めの到着となったが、さっとドアが開かれ、温かく迎え入れていただいた。
そこからは非日常の空間が広がり、趣味の良いウェイティングルームでは冷たいお茶が供され、これから始まる食事に向けて準備を整えるにはちょうど良い時間になる。
そして両側の棚に整然と並べられたワインが期待感を盛り上げてくれる。
フロアスタッフによる付かず離れずの心地よい接客は、この手のガストロノミーレストランとして十分満足ができる、クオリティの高いものであった。
料理はどれを取っても隙がなく、日本の食材を見事に取り入れて融合させ、至高のフレンチの一皿を完成させている。
盛り付けも夏らしく、そして彩りも美しい。
複雑だがバランスの取れた味、そして計算し尽くされた食感。
素材を活かす技術、火入れも文句なく（ミキュイの火入れは本当に絶妙だった）、組み合わせるソースにもこだわりを感じる。
ヴィアンドも肉質は最高で火入れも完璧。
このコースのメインにふさわしい一皿であった。
ワインのフルペアリングをお願いしたが、評価の高いAZURワインのみにこだわりを持たず、ブルゴーニュを中心とした質の良いワインを合わせてきた。
料理とのマリアージュは完璧で、思わず笑顔になってしまう。
チーズに合わせたデザートワインも幾つかから選ぶことができ、通して結構な量のワインをいただいてしまった。
ソムリエは若い方であったが、説明もわかりやすく、これからに更なる期待が持てそう。
全体を通して至極の時間を過ごさせていただいた。
植木シェフの料理人としての類稀なる感性、そして技術の高さに敬意を表したい。

以前石塀小路にお店を構えていらっしゃった頃に何度かお邪魔したことがあり、美味しい京料理の店だなと思っていたのも束の間、お店が移転してしまい、コロナにも邪魔をされてすっかりお伺いする機会を失っていた。
今回やっと希望が叶ったという訳である。
嵐山の喧騒からは少し離れた、桂川沿いからちょっと入った住宅地の中に、立派な門構えの京料理屋さくらがあった。
中に入るとすぐにご主人自らがお出迎えくださり、空調の風の当たり具合をはじめ、色々と温かいお気遣いをいただいた。
カウンターは広く隣との距離も十分にあり、ゆったりと落ち着いて食事ができる。
しっかりと仕事を施された木の美しさを感じる部屋とシンプルな調度品に見守られながら、凛とした雰囲気の中で食事が始まった。
少し洋を取り入れた前菜から始まり、伝統の京懐石の技法を守りつつ創作の意欲も感じられる料理は盛り沢山で、実に美味しい。
お薦めの日本酒と料理のマリアージュも絶妙であり、満足できた。
カウンターでの店主との会話は楽しく、もてなしの粋が感じられ、料理や素材のウンチクが、出された料理をさらに昇華させてくれる。
静かで心地良い雰囲気の中、本当に素晴らしい食事を楽しむことができた。
ちなみにコスパも満足できるもの、また是非お伺いしたい。

夕刻とはいえ暑さ衰えぬ京都の夏、喧騒の祇園花見小路に面したお店に入ると、そこは正に別世界である。
見事な仕事を施された木材を使った高級感のある設えが、これから始まる夕食に期待を持たせてくれる。
極上の食材をふんだんに使い、確かな匠の技で手間暇をかけて調理された料理の数々は、唸るほど美味である。
京懐石らしく盛り付けも美しく、ありきたりの表現だが、目でも十分に楽しませて貰った。
ただ一点、人手不足なのか、店主がお忙しそうだった。
常連客が多く、カウンターでいただいたが会話は常連客とになってしまい、料理についてなど話しかけるのを躊躇しなければならなかった。
こういったお店では、料理のウンチクをお伺いするのもカウンターでの楽しみのひとつなので、料理がほぼ完璧なだけに少し残念であった。
また、個室だろうか、大声をあげての話し声が聞こえて、凛とした雰囲気を期待していた者としては、少々気になってしまった。
まあ日頃から贔屓にしてくれる常連客を大切にするのは、当然ではあるのだが。
次回京都を訪れる機会があれば、是非静かな時にまたお伺いしたい。

気温が37度を超える酷暑の日、ランチにお伺いした。
花見小路から一力脇の狭い路地を進み、見過ごしてしまいそうな小さな看板のある狭い間口から中に入ると、もうそこは別世界で、和と洋が融合した素敵な空間が広がる。
京都らしい美しい中庭を見ながらの食事に、特別感を感じる。
料理は・・・、美味しい。
素材の味、香り、食感までも含め、その持ち味を存分に発揮させ美しく盛り付けられた料理の数々は、シェフのセンスの良さを感じずにはいられない。
ソースも凝っていて、しかし主張し過ぎず、ガルニに至るまでバランスがとても良い。
全体的に僅かだが塩味が強い印象があるが、このシェフのこと、酷暑で発汗しまくった後の塩分補給を考えてのことなのではと思うほど、工夫の凝らされた料理の数々に満足した。
冬瓜を使ったデザートにフランボワーズのパフェも絶品だった。
新幹線の時間に追われてのランチだったが、手際よく料理を提供してくださったシェフ、そしてスタッフの方々に感謝です。
次回京都訪問の際には、ゆっくりと時間をとって、是非ディナーでお伺いしたい。